それからはずっと、中村の涙が脳裏に焼き付いたまま消えなかった。

雨が地面に染みていくように、俺の中でもそれはどうしようもない事で。


雨を見ると、中村を思い出すようになった。


心に出来た染みは蒸発する事なく、何も出来ないまま一週間が経った。


中村と、初めて会話した日──……。





「ヤベっ!財布教室に忘れた!」


大輔が叫んだ。

その日も生憎の雨で、部活は当然筋トレ。
それが終わり、体育館を出たところだった。

大輔が財布を取りに行っている間、俺は玄関前で待つ事にした。


傘を閉じブルブルと回して水滴を飛ばしていると、玄関から誰かが出てきた。

──中村。