「翔真、やったな」


大輔にそう言われたのは、ある日の部活の筋トレが終わった直後の事だった。

湿気に包まれたコンクリートの中で、大輔はいつもの意地悪じゃない、太陽のようないい笑顔を浮かべている。

かくいう俺も、顔の筋肉という筋肉が緩みっぱなしだった。


「すげぇじゃねーか」

「あざっす」

「やっぱ監督はちゃんと見てくれてんだな」

「あざっす」

「お前、」

「あざっす」

「…………」

「…………」

「……さっさ行ってこい」

「おうっ。じゃ!」


俺はさっきの大輔に負けないくらいの最高の笑顔を浮かべると、一目散に駆け出した。

背後で大輔が呆れ顔で立ち尽くしているのが目に浮かんだが、今はそんなん気にしてる余裕はない。


早く早くと急かしながら向かうのは、学校の玄関。


はぁぁ、緊張する……。


そして、玄関が見えた。