私の通学路で彼は待ってました。

いつもと同じ真っ白なバイクに乗って。

「君の兄の最後の願いだ。君の中から事故とそれにまつわる記憶を消しにきた。」

彼は私にそう言うと私の頭に手を置いた。
「結構です!」
「君がいいと言うなら俺はしない」

彼は私の前からすぐにいなくなろうとした。
「待って!」
「どうした?」
「お兄ちゃんとの記憶を消せば、私は二度もお兄ちゃんを殺した事になる。だから私は心の隅にでもお兄ちゃんが生きていける空間をあけてあげていたい」
「俺は、君の言いたい事が分かる気がする。」

彼がそんな事を言うとは思わなかった。

それと同時に彼にも想う人がいる事が分かった。
「また、会ってくれますか?」
「分からない。俺は出来るかどうかの約束はしない。」
「さようならはいいませんよ!」
「分からない。」
「またね!黒猫ちゃん」

少し怪訝な顔をして彼はサポーターのついた指を私に見せると大きな白いバイクに乗って願いを叶える黒猫の姿は見えなくなった。

多分、私とお兄ちゃんの長い長い夜が明けたんだと思います。