「エヘヘ!」
「気持ちは嬉しいけど菜綱!君は家に帰らなければならない!家族が心配するじゃないか!」
「家族なんていないよ」

その一言は寂しそうだった。

そのあとすぐに菜綱はいつもの少年のような笑顔に戻った。

この娘をこんな時間に一人にするわけにもいかない。

とりあえず俺が保護者って事で大丈夫だろうか?
「分かった!手伝ってもらうよ!」
「ホントに?やった!」
「その代わり条件がある!昼は家に帰る事!俺は夜にしか探さない!それでもいいなら手伝ってもらうよ!」

菜綱はもう冷めてしまったであろう紅茶を啜ると俺の腕に飛びついた。
「おっけーおっけー!じゃあ何処いこうか?」

デートにでも行くように菜綱はテンションが高い。

もし生きてたらこのくらいの年だったろうか?
「とーじ?」
「あぁ、ごめん!今は午前三時か、五時には家に帰るんだ。いいな?」
「はーい!」

ホントに分かってるんだろうか?

「じゃあ、学校の方に行ってみようか?学生の方がユタロウに遭遇している確率は高いらしい」
「へぇ~」

二人で肩を並べて歩く。

久しぶりだな。

妹を迎えに行ったらいつもこうして歩いたっけ