「ついてこいって事か?」

走った。鬼ごっこをしてるみたいなとても楽しかった。

突如重力が変ったかのように俺の足が進まなくなった。
「・・・・ここは」

そこは郁子が通っていた幼稚園へと続く道だった。

俺は戻る事が出来なかった。

俺は一歩一歩重くなる足を無理矢理動かした。

あの場所へ行けば例えユタロウに会えなくとも何かが変るかもしれない。

そう思った。
「みゃあ」

三毛猫は俺の気も知らずにトテトテと行ってしまった。

あと二十メートル、十、五、四、三、二、そこは俺の知っている事故現場そのものだった。

俺はあの日からこの場所を避け続けた。

今こうして普通に立っているのが不思議だった。
「何も変らずか・・・」

その時、この夜の静寂を破るように大きな音が聞こえた。
ドドドドド・・・ドドドド

俺は驚いて振り返った。

そこには大きなバイクに跨った青年、もしくは少年が俺を見下ろしていた。

黒い髪に黒いジャケット、俺はこの男を知っている。

夢の中で成長いた妹が体を預けた男、これは夢なのか?

いつの間にかまた白日夢でも見ているのだろうか?
「夢じゃない」