菜綱の夜

「まずは黒猫探しだ」

俺は探しに探した。

何処から探すか、駅周辺を俺は探す事に決めた。

ゲームセンターには高校生らしき少年達やいかにもガラの悪そうな奴らで一杯だった。
「こんな所に猫がいるわけないか」

ラーメン屋の残飯置き場何かも探したが不思議な事に一匹も猫に出会わない。

俺は途方にくれ自分の家に帰ろうと思った。

もしかしたら公園で菜綱が待っててくれてるかも、とか思ったんだと思う。

何故か俺は真っ直ぐ家に向かわず公園の方に向かっていた。
「みゃあ」

俺は猫の鳴き声に驚いて振り返った。

ユタロウ？まさかこのタイミングで？

俺はその猫をユタロウだと信じて疑わなかった。
「ユタロウなのか？」

素早く俺の方にその猫が駆け寄って来た。

俺の期待を裏切りその猫は黒ではなかった。

何処か気品のある三毛猫だった。

とても人懐っこい猫だった。
「どうした？お前夜の散歩か？」

俺の足に擦り寄ってくるこの猫を抱き上げた。

するとその三毛猫が俺の頬をペロッと舐めた。
「コラ！」

何だか、温かいなぁ。

俺は一人になったからこんな子猫でも俺の支えになってくれて俺は嬉しかった。

猫は俺の腕の中でゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らした。
「お前、友達にユタロウっていないか？」

その時、その猫がピクンと体を震わせ俺と目があった。
「みゃ・」

突然俺の腕から飛び降りると三毛猫は走り去って行った。
「ユタロウ連れてきてくれよ！」