「ごめん!俺は怒ってる時より笑ってる菜綱の方が好きだけどな」
「にゃはは、ボク笑ってる時素敵?」

素敵って、まぁ可愛いっちゃ可愛いけどな
「あぁ!超可愛い」
「そうかな、ボク可愛いかな?」

菜綱はいつのまにか俺の腕に抱きつくようになっている。
「とーじ、今日は何処行くの?」

菜綱嬢のペースに持ち込まれたが俺の目的はユタロウを探す事、そして郁子との決別なのだ。

そろそろ、自分から逃げるのを止めなきゃな。

だから今日行く場所は決めていた。
「そうだな、今日は・・・病院かな」

郁子が消えた場所、ユタロウは怪我人や病人の前によく現れるという。

なら病院ならユタロウに出会える可能性は高い。

だが、俺は本当に行っていいんだろうか?

多分あれは集中治療室か何かだと思う。

その前で父さんと母さんが俯いていた。
「父さん、お、俺がぁ」

父さんも母さんも俺の存在を否定するかのように俺の言葉を無視し続けた。

だからせめて俺は祈った。祈った。

郁子が死ぬわけなんかないじゃないか?

だが現実は普通に俺や両親の前から郁子を奪った。

誰か叫んだ!それは郁子の死・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

俺の叫び声なのか父なのか母なのか分からなかった。