「浬津様…もとい、優喜麻津名様。
貴方は、東苑堂寺(ひがしおんどうじ)家のたった一人の跡取り娘なのでございます。」
「へ?ひっ…東苑堂寺?!あの、超名家の東苑堂寺!?」
「そうでございます」
「…貴方頭大丈夫ですか?そんなわけないでしょー?」
男の台詞をまったく信じない麻津名。
「本当です。
そして、申し遅れました。
私、東苑堂寺家筆頭執事・淡岩と申します。
これからは、主に浬津様の面倒を見ます。」
全然動じない淡岩の話し方と、母と麻津裏の顔を見て、顔を青ざめさせる麻津名。
「なっ…何、言ってるの?わ、たしは…優喜家の……」
「一時的な養子でございます」
「……っ」
「東苑堂寺家では、跡取りの子供が生まれた時、同年同月同日同時刻に生まれた東苑堂寺とはまったく血の繋がりも何もない家の一時的養子となる決まりなのです。」
「……わけわかんないよ」
麻津名が、顔を歪めさせながらしゃべっても淡岩は話しつづける。
「そして、麻津名様が生まれた時と同じに生まれたのが、麻津裏様でした」
「麻津裏兄ちゃん…?
ねぇ、淡岩さん、今の話しからいくと、私は東苑堂寺家の子供で、麻津裏兄ちゃんとは血も繋がってないアカの他人ってことなの……?」
少しだけ希望を残して、不安を掻き消しながら麻津名は淡岩をしっかり見ながら聞いた。
…が、次の瞬間、希望は掻き消された。
