企画小説



「……え?」

「聞いてなかったのか?好きだって言ったんだよ」

「誰が、誰を?」

「俺が、麻津名を」

「うそだ!!」

「嘘でこんなこと言わないしね」

「うっ…」


それに麻津裏は滅多に嘘をつかないことも、麻津名はわかっていた。

が、何より今の状況でそんなこと言われても困ったのだ。


「…私は、」

「ああ、言わなくていい」

「…えっ?」

「どうせ、イイエだろ?」



麻津裏にそう言われて何も言えなくなった麻津名。

わからなかったのだ、この色々なことが明かされた日に自分の麻津裏に対する気持ちなど。

が、一つだけ引っ掛かっていたのは、麻津裏の先程の

“どうせ、イイエだろ?”

の部分。
チクン、と音をたてて胸が傷んだ。

数秒固まった麻津名の口は、いきなり思考回路が全て動き出し、勝手に動いた。




「ううん、イイエなんかじゃないよ」

「は…?お前何言ってんの」


動き出した口は、もう止まってくれなかった。

それが、麻津名の本当の気持ちを表していたから――。