‐Fear‐

 警察署の屋上‐

 干潟と吉岡が手摺りにもたれながら話している。

「俺、納得いかないっすよ。」

「強引な捜査で自殺に追い込んだ。そう報道されてもおかしくないらしい。まだ実際にはされていないがな。」

「そんな…。ひどいですよ。さんざんプレッシャーかけていたくせに。」

「吉岡。あまり上に逆らわん方がいい。お前はまだ若い。定年待ちの爺とは違うのだからな。」

「でも…。」

「俺を思ってくれるのなら、事件を解決してくれ。」

 そう言って、立ち去ろうとする干潟。

「ちょっと待ってください!」

「ん!?」

 自分の胸ポケットから煙草を取り出し、それを差し出す。

「……。」

 無言で煙草を受け取り、口にくわえる干潟。

 吉岡が手を添えながら火をつける。

「ふーっ…。」

「どうですか?久しぶりの煙草の味は。」

「ふん、こんな味だったかな。あまり美味く感じねぇや…。」

 干潟が苦笑いを浮かべた。