ピンポーン。

「こんにちは、佐伯理恵菜と申します。」

 玄関のドアを開けたのは上下スウェット姿の若い男。新島英明だ。

「お話聞かせていただけるという事で、感謝します。」

「…別に。警察に話した通りですけどね。俺は何もしてないし、直接家に行った事もない。まぁ…親父が死んだ事はショックですけど。」

 昼間は母親は仕事に行っている。
離婚後母親は女手ひとつで一人息子を育てている。
父親に対する恨みなどはあるのだろうか?

「ないよ。最初は母ちゃんを捨てやがって、と思った事もあったけど母ちゃんも悪いとこあったし。浮気が原因だろうけど、その人と結婚したんだし親父も本気だったんだろ。…死んじゃって可哀相だとも思うよ。」

「その人を見たくてお父さんの所へ?」

「行こうとは思わなかった。どんな家族なのか窓から見えないかな…とかそんな程度。ふと気になっただけ。今じゃなんで家の周りうろついてたんだろ?って思うよ。」