「そう…。うん、わかったわ。」

 若い女性が電話で話している。

「あなたの頼みだからって訳じゃないわ。初めての指名だから…なんてね。はい、頑張ります。」

 電話を切る。

「佐伯さん、OKかしら?頑張ってね。」

「はい、行ってきます!」


 黛弁護士事務所。

 数名の女性弁護士が在席するこの事務所で、一番経験の浅い彼女は初めての大仕事に緊張よりも興奮していた。

 彼女の名は佐伯理恵菜。
足早に彼女は駅へと向かった。





 警察署内の自動販売機の前で吉岡は悩んでいた。

 缶コーヒー…全部はいらないなぁ。
冷たいコーンスープ?なんだこりゃ…そういや今日何も食べてないな。

「吉岡、後ろが詰まってるぞ。」

「あ、干潟さん。すいません。」

 干潟が吉岡を押し退け、小銭を入れ冷たいコーンスープのボタンを押した。

 ゴトン。

「あ…。」

「ん、なんだ?」

「いや別に。あ、そういえば禁煙続いてるんですか?」

「続いてる。悪いか?思い出させるんじゃねぇ、吸いたくなるだろ。」

「はは、すいません。ん!?あれ?」

「どうした?」

「あそこ横切ったの…。」