朝起きたら両親が死んでた。



 その言葉を繰り返すだけの少年を前に、心理カウンセラーの日比野は考え込んでいた。

 開業して2年。間違いなくこれまでの中で一番大変な患者。
少し前まではこんな事になるなんて思いもしなかった。
そう、この事件が起こるまでは…。



 少年は目の前の心理カウンセラー日比野に何を言っていいか分からず考え込んでいた。

 少年の名は小林優太。15歳。
普通の中学生なら3年のこの夏は受験勉強でもしているのだろうか。
だが優太にはそんなものが生温く感じるほど厳しい人生の岐路に立たされていた。