『不思議だな。気持ちが晴れ晴れとしている』



ゆずに手を出した泉を憎く思ってしまいそうだった。


でもそれ以上に嬉しかったのだ。


泉が真正面から向かってこようとしていることが。


長い間、泉と過ごしてきた。


長い年月をかけて築いてきた信頼関係を誇りにも思う。


けれど、いつも泉は千の少し後ろを歩いてきた。


幼いころからずっと。


まるで主従関係のようだった。


千はそのことを少しばかり悲しく思っていた。


大切だからこそ、


失いたくないからこそ、


向き合いたかった。


真正面から。