狂愛~狂うほどに君を~



互いが互いに背を向けてその場をあとにする。


一歩踏み出すと千の口元は僅かに緩み、泉の瞳も穏やかになった。


本心で憎みあえるわけがなかった。


憎みあいたいわけでもなかった。


でもたったひとつ譲れないものができてしまったのだ。


それも、世界中どこをさがしてもたったひとつしかないもの。




『本当、敵わない・・』




いつだって千の背中をみてきた。


突出した力を持つ故に孤独だった千の味方でありたいと思っていた。


けれど、いつだってなんだって千になにひとつ敵わないことが苦しかった。


千の味方でいると誓ったからには守りたいと思うのも当然で。


でもいつだって何かあるとき守られてきたのは自分だった。