『ごめんなさい・・・。』





ゆずはそれだけ言って駆け出した。


泉はゆずを引き止めなかった。


それが何故なのかは分からない。


けれど怖かったのかもしれない。


ゆずを傷つける自分が・・。




『・・・千、みてたんですよね?』




響き渡る泉の声にスッと千が現れた。


ずっと気づいていた千の存在。


ゆずの腕をつかんだときにはもう千はすぐそばにいたのだ。


絶対に飛びかかってくると、


絶対に掴みかかってくると思った。


なのに千は泉を止めにすら入らなかった。




『意味は分かっているのだろう?』




目の前に現れた千の瞳は冷酷だ。


けれど・・何故か泉は怯えることはなかった。


いつもならこの瞳をした千はずっとそばにいた泉ですら怯えてしまう。


それは瞳の奥に見える心のせい。