たまたま聴いてしまったゆずの声。




「千さん・・・。私、千さんがイヤだと言っても傍にいます。だから・・私の所にいてください。」




こんなふうに望まれたことなんか一度もない。


千がゆずと泉の前を去ってから


ゆずは一度も自分から泉のことを求めたことなどない。


傍にいて


頭を撫でてくれて


けれど


それでも


千を超えることがなかった。


何に対しても・・・千が上手。


もしも・・・千がいなかったら。


ゆずの隣にいたのは・・?


もしも、


もしも千がいなかったら。


押し殺してきた感情があふれ始めた。