決めたはずだ。
ゆずが全てを思い出したとき、ゆずを手放すと。
それなのに何故、こんなに苦しいのだろう。
ゆずは目の前にいるのに、恋焦がれてたまらない気持ちになってしまう千。
『千さん・・・私、リアムのことを思い出しました』
『ああ』
『私は・・・天使なのですか?』
ゆずに抱きしめられたままの千は、一瞬停止してハッキリと答えた。
『そうだ。ゆずは・・・人間ではない』
肯定せざる負えなかった。
リアムの記憶を取り戻し、自分が天使でその守護霊がリアムだと分かってしまったゆずに嘘はつけない。
ゆずは確固たる記憶の欠片を手に入れたのだから。
『千さんは、人間ではないですよね』
今まで、触れてこなかったこと。
ゆずは触れたいけれど、触れてはいけないような気がしていた。
人間ではないことは出会った頃から感じていたし、人間ではないことについて戸惑いもなかった。
千が千であるのなら、愛しいという気持ちが変わることはない。
そう確信していたから。
だが、自分が天使ならば。
千はそれを受け入れてくれるのだろうか。
そんな一抹の不安がゆずにその言葉を発させた。
『お前の目には・・・何に見える、ゆず』
千はゆっくりとゆずの胸元から顔をあげ、視線をゆずと合わせた。
見つめ合う二人。
『愛しい人です』
ゆずの凛とした声が千の鼓膜を揺らす。
『ただそれだけです』
答えを出すには、まだ早すぎる。
真実を知るには、まだ早すぎる。
『俺も、お前が愛しい・・・ゆず』
千が重ねてきた唇の熱を感じながら、ゆずは思う。
きっと、これは禁忌。
それでも私は・・・まだここを離れたくない。
決断を下すのはすべてを知ってからで良いでしょう・・・?
愛しいと思う人が、
愛しいと言ってくれる人が、
目の前にいるのだから。

