狂愛~狂うほどに君を~






『場所を変えましょうか。千の瞬間移動の魔力を感じ取ったものたちがうじゃうじゃと集まっているようです』

『ああ・・数百はいるな。泉の空間移動で一度湖に戻るぞ』



千は瞳を閉じ、五感を研ぎ澄ませる。


草木の影や雪の下から感じ取れる天界の魔力。


戦闘部隊を用意してくるとはな。


大天使様もついに焼きが回ったか。



『ゆず!行くぞ』



千はゆずをリアムごと抱き上げると泉の創造した空間へと入り込んだ。



『千さん?』

『追手がいたんだ。乱暴に抱き上げてすまなかったな』

『いえ・・千さん、私・・・』

『後で、二人で話をしよう』



ゆずの瞳から何を言わんとしているのか、千には分かってしまう。


一つ目の記憶の欠片を手にしたゆず。


自分が一体何者なのか・・・。


自分の本当の名を知ったゆずが、気づき始めている。


天界と魔界。


交わってはいけない二つの世界。


天使と悪魔。


決して許されることのない愛。


ゆずの記憶の欠片を一つ取り戻したことで・・・終焉へと繋がる鐘が鳴り響いた。