狂愛~狂うほどに君を~




ピタリと千が歩みを止める。



『どうしたんだよ、おっさん!』



イアンはイライラを隠せずに急かすように千に尋ねた。



『決着はついたようだな。泉の魔力を一瞬感じた』

『そんなの分からないよ、相手はルーカスの使い魔なんだ!!いくら白蛇の泉って言ったって・・・ルーカスの使い魔は天界一の使い魔なんだ・・・!!それが二人もいたら!!』



イアンの訴えかける拳に力が入る。



『いや・・・終わりだ。あの程度の奴らでは泉に適うわけがない。行くぞしっかり掴まっていろ、瞬間移動だ』

『出来るなら最初からしろってんだ!おっさん!』

『うるさいサルだな』



大木の枝にいた二人の姿は一瞬で消え去った。


瞬間移動をすることは膨大な魔力を瞬時に放つことで成立する。


故に、敵に魔力を悟られることは必至。


つまり今までは使えなかったのではなく、使わなかったのだ。



『ゆず!!』



泉の魔力の元へと移動した千。


千の目に映ったのは気を失って倒れているゆずだった。



『気絶しているだけのようだな・・・』



千はゆずを抱き起こし、ゆずの胸に手を押し当てる。


その手から紫色の光が零れ落ちる。



『・・・・・千、さん?』



光が収まった直後、ゆずは気を取り戻した。



『危険な目に合わせたな、悪い』



ぎゅっとゆずを包み込む千に少しの安堵の色がうかがえた。