『泣けるねぇ。いくら守護霊だからといっても気を失ってなお、立ち続けますか』
リアムは全身針だらけになり、足元には血だまりが出来ていた。
それでも強い想いだけでその場に立ち続けている。
『じきに毒が周りきる。命が尽きてしまえばシールドも外れるでしょう。まだ子供なのにかわいそうですねぇ。さぁ、その女を連れて帰るとしましょう』
二匹のウミネコがゆずに向かって歩みを進める。
一歩踏み出すとウミネコの姿から人型へと変わった。
人型に変わっても仮面で顔を覆っており、表情はまるで見えない。
『ぐあぁ!?』
ゆずを気絶させたウミネコが悲鳴をあげ、その場に崩れ落ちる。
『カザフ!どうしたのです!』
『油断するな、ルイス!敵がいるぞ』
先ほどまでリアムと対峙していたウミネコのルイスは周囲へと自分の魔力を泳がせる。
敵の魔力を察知するためだ。
『くっ・・・これは、毒針・・・?』
首の後ろに針が刺ささったことがカザフが崩れおちた原因だった。
『何故・・!?私は今毒針などつかっていない!』
自分が使用する毒針が仲間のカザフに突き刺さっていることに困惑を隠せないルイス。
『おやおや、大変そうですね?』
ルイスの背後から現れたのは・・・グレーの光に身を包む、泉。
『まだ子供であるリアムをよくもここまでいたぶってくれましたね?・・・僕なりのやり方であなた方を楽しませてあげましょう。目には目を・・・毒には毒を、ね』
泉は自分の胸の前で腕をクロスさせる。
その指の間にはカザフに突き刺さったものと同じ毒針。
『マクベス、リアムの解毒をお願いしますね。僕は少々、彼らの躾をしますので』
リアム・・・あんなに大量の毒針を体に受けてゆずちゃんを守ってくれたのですね。
君が守り抜こうとしたゆずちゃんは必ず僕が守りますよ。
だから、とにかく生きてください。
ボロボロのリアムを見て泉の心はグッと痛んだ。
『あなた方がした方法と全く同じ方法で、苦しませてあげますよ』
泉は両手に挟んだ八本の毒針をルイスへと放った。

