リアムは隠し持っていた短剣を両手に構える。
自分がやられてしまえば、ゆずを包み込んでいる魔力も意味をなさなくなってしまう。
致命傷だけはなんとしても避けなければいけないのだ。
いつも以上の力で剣を握りしめた。
『そちらがいくら魔力を使わなくともこちらは容赦しませんからね』
ウミネコは口内に魔力を集中させる。
リアムに眉間に皺が寄り、緊張が走る。
恐らく目の前の敵にとって自分は互角かそれ以下だ。
相手が一人だったのならばどうにかなっていたかもしれないが、二人となれば
負けは決まっているようなもの。
魔力の差と、緻密なコントロール。
守護霊の中でいえばリアムもかなりのやり手ではある。
しかし目の前の敵は実質天界を統べる男の手下なのである。
相当なやり手であることに間違いはない。
『くぅっ!!!!!』
ウミネコの口が大きく開き、そこから放たれたものは幾千もの針の数々。
短剣二つを駆使してなんとかはじくのが精いっぱいだ。
『ツッ!』
一つの針がリアムの頬をかすめる。
傷口から一筋の赤い雫が滴りおちた。
ドクン
リアムの心臓が一際大きな音をたてる。
『毒・・・!』
どうやら針のひとつひとつに即効性の毒が仕込まれていたようだ。
頬の傷は大したことがないのに体の動きが鈍り、
体の動きが鈍るのに比例して針を体で受ける量が増えていく。
ここで、倒れるわけには行かない。
今ゆずが手を出されていないのはリアムの魔力がゆずを包み込んでいるからで、
その魔力はリアムが倒れれば消え去ってしまう。
どんなことになろうとも、ゆずの安全が確保できるまでは倒れるわけにはいかないのだ。

