雪道をゆっくりと進むのは狐の耳と尾をもつ少年と儚げな美少女。
『ねぇ、ゆず!』
『どうしたの?リアム』
久しぶりにゆずと二人きりで上機嫌のリアム。
そんなリアムにゆずも優しく応じていた。
『あのね、ずっと聞きたかったんだけど。・・・ゆずは千のことが好き?』
『へっ?え、えと・・・あの・・』
突然のリアムから質問にタジタジになってしまう。
『とっても、大好きだよ』
けれど、自分の気持ちを偽ることはしたくなくて素直な気持ちを口にした。
千と出会って、たくさんのことがあった。
千と離れている間は辛くて仕方がなかった。
もう二度と、離れたくない。
何を失ってしまっても・・・千のそばにいたい。
昔の記憶はないけれど、そんな気持ちを抱いたのは初めてだとゆずは思うのだ。
『私・・・記憶を取り戻して、ちゃんと感じたいの。千さんが最愛の人だって』
記憶のない自分じゃなくて、今までの自分を取り戻して・・・伝えたい。
『ゆず・・・』
リアムは苦しくなった。
ゆずが記憶を取り戻して自分のことを思い出してくれるのは、すごく嬉しい。
それとは裏腹に、ゆずが酷くショックを受けるのが目に見えて。
ゆずの記憶を取り戻すためのこの旅が、正解なのだろうかと迷ってしまう。
旅をすると決めたのはゆずだけれど。
ゆずの求める幸せはこの先にないような気がしてしまうのだ。

