シークレットストーンに唇を寄せる千。
そこから現れた光が画面へと変わり、映し出される五つの点。
その点が表わすのはお互いの位置関係だ。
千は白と水色の点の位置をから一番近いものを探す。
・・・グレーだ。
『泉の方がゆずに近いな。ゆずたちと500m程か。俺は泉にこのまま連絡をとる。サル、お前はさっき言った通りにゆずに連絡をとってその場を動くなと伝えろ』
『分かった』
ゆずの身を案ずるイアンは反発することなく、千の指示に従う。
『泉、俺だ』
『どうしましたか?』
『ルーカスの手下がゆずを探しにここへ来ているようだ。ゆずとリアムに一番近いのは泉だ。すぐに向かってくれ。俺も向かう』
『・・・了解しました。それにしても、何故ここが・・?』
『サルによればゆずの両親の記憶をヤツが持っている』
『なるほど、では急ぎます』
泉の言葉を最後に光はシークレットストーンの中へと消えていった。
『サル、そっちはどうだ』
胸ポケットの中でゆずに連絡をとっているイアンに、ゆずの状況を問う。
『リリィ様!?リリィ様!!』
『なんだ、どうした』
千はゆずのいる方角へと足を運びつつイアンに声をかける。
『チィッ。ゆずのいる方面から魔力を感じるな・・・。おい、サル現状を説明しろ』
雪の上を走っていくにはかなり時間がかかりそうだ。
千は木に飛び乗り、木から木へと飛び移りながら移動することにした。
魔力を使えばすぐにでもゆずの元へと行くことが出来るが、今ここで魔力を相手に感知されてはゆずがすぐに連れ去られる危険性もある。
『リリィ様が二人組の男に奇襲されてるんだっ!今はリアムが闘ってるけど・・・』
『なんだ』
『リリィ様、頭を殴られて気絶してる!!おっさん、急いで!』
イアンの言葉に溢れだしそうになる魔力を必死に抑え込もうとする千。
ゆずに何かあったら・・・。
そう思うだけで魔力をつかっていないとは思えないほどのスピードが出る。

