狂愛~狂うほどに君を~




『千さん。なんだか湖が波打っていませんか?』



千の膝の上に強制的にのせられていたゆずが窓から湖の景色を眺めていると、魚が上下に激しく揺られているのがみてとれた。



『ああ、泉だな』

『え?しばらく帰ってこないって・・』

『用事が早く済んだか・・・緊急事態かってとこだろう』



千がゆずをお姫様抱っこして立ち上がった瞬間、目の前に泉が現れた。



『泉さん!?本当に帰ってきた・・ってその子はどうしたんですか?おさるさん?』



泉の腕に抱かれたイアンにくぎ付けのゆず。



『ただいま戻りました、イアンです。ちょっと色々ありまして連れて帰ってきたんです』

『そうでしたか。眠ってるんですね、かわいい』

『確かに愛らしいですね。もうじき目を覚ますでしょうから少しの間みていてもらってもいいですか?千、ちょっと』



泉はゆずにイアンを受渡し、千とリアムの寝ている寝室へと向かう。


千は去り際にイアンを見つめる。


メガネザル、か。天使の類だろうな。



『何か分かったのか』

『ええ、女郎蜘蛛の深層心理にマクベスに入っていただきました。これを・・』



真っ青な液体の入った小瓶を千に差し出す。


グレイスの記憶だ。