狂愛~狂うほどに君を~



泉が千の元へと向かいながら考えるのは魔界と天界のこと。


もうずっと昔のことである。


魔界という世界が出来たのは。


魔界を統べる存在はもともと天界で天使として生活をしていたもの。


何故、その天使が天界を離れ魔界を創造し天界と敵対したのか。


人間たちが代々受け継いできた話では、天界の頂点に君臨する神に背き天界を追放されてしまったものが堕天使となり悪魔になってしまうといったものだ。


漠然としたその内容で世界は魔界を悪とした。


神に背いた存在を、悪とした。


その天使がなぜ神に背いたのかなどと考えることはせずに。


神に仕える天使を、正とした。


魔界は黒で、天界は白。


黒は覇するのは白であってほしいと、いつも人は願ってきたのだ。


しかし、泉は思う。


何故人は神を正しいものとするのだろうか。


神の何を知っているというのだろうか。


神の思い通りのままの世界に、抗うことをやめてしまった天界は本当に正義なのだろうか。


僕らが目指している世界は・・・黒だというのか?


黒と白が、交わりあうことがなぜ禁忌なのだろう。


誰も答えを知る由もない問いを自分自身に問い続ける泉。



『もう着くころだな』



泉の様子をずっと見守っていたマクベスが、千とゆずが滞在している湖を感知しそう告げた。