狂愛~狂うほどに君を~



黒い空間の中、イアンをクッションの上へと横たわらせ泉は壁に寄りかかっていた。


空間移動をしている間、泉自身はずっと集中力を保たねばならない。


そのうえ、魔力を移動時間の間ずっと放出し続けるのだ。


移動を初めて30分もすれば泉の額に汗が滲む。


かなりの距離を移動しているのだから仕方のないことではあるが、体に負担がかかるのは事実。



『あまり急ぐ必要はないだろうが。そんな無理をするな』



泉の肩に乗っているマクベスが泉の体を心配するが、泉は首を横に振る。



『少しでも早くゆずちゃんの元へ戻りたいんですよ、僕が』



千と二人にしてきたことは悔やんでいるわけではないし、二人の仲を邪魔したいと思っているわけでもない。


けれど泉にとっては千とゆずと過ごす時間は格別で、会いたいという気持ちから魔力が湧いてくるような気すらしてしまう。


それに、すぐにでも知らせたい。


イアンのこと。


グレイスの深層心理に入り込んで得ることの出来たグレイスの記憶についても。


何か、ややこしいことが起こる前に・・。


泉から千に伝えたいのだ。


あとは・・・愛しい子に会いたいという思いが泉の体を突き動かしていた。