狂愛~狂うほどに君を~





『なるほど、千の力が目的だったのではなく・・・元からゆずちゃん自身が目的だったということですね』



マクベスのおかげで泉に流れこんできたグレイスの記憶。


グレイスとイアンが纏っていた天界のモノの気を魔界のモノへと変化させ、千の膨大な魔力を目的とみせかけて魔界の気を纏いゆずに近づこうとしたのだ。


蜘蛛の毒でゆずを仮死状態にし、その後イアンが創造した空間に千と泉を閉じ込めゆずだけを天界に連れ帰るというシナリオだったようだ。


千と泉相手に適うとは毛頭思っておらず、イアンを使い時間稼ぎを行おうということだったらしい。


しかし、それは失敗に終わりグレイスとイアン共に囚われの身である。



『マクベスの言っている意味が解りましたよ。この少年は潔白どころか、ゆずちゃんのおつきの天使だったんですね』



グレイスの記憶では、記憶を書き換えられる前のイアンはリリィのお付きでとても仲良しだった。


イアンはずっとリリィのあとをくっつき回ってリリィはそれを優しく導いていたようで、イアンのリリィに対する大好きだという気持ちがイヤというほど感じ取れた。


しかし男によって記憶を書き換えられたイアンはグレイスと共に無理矢理に天使の位階の第六位であるパワーズにされてしまったのだ。


パワーズの役どころは、対悪魔戦闘員。


つまり・・・いやでも戦わなくてはならない運命ということだ。




『記憶の上書きをするとは・・天界のモノのすることではありませんね』

『そのメガネザル程度の記憶なら俺様の力で戻してやることが出来るが・・そいつにとってそれが良いかどうかは知らんぞ』




マクベスの声が重たく部屋に響き渡った。