『でもあたくしがリリィ様をそんな目に合わせたと天界に知れてしまったら・・・』
不安そうな視線を男に投げかけるグレイス。
セラフィムのディランとオリヴィアの娘であるリリィを仮死状態にしてしまったらどうなるのか。
それがバレなければ問題はないだろうが、バレてしまえばグレイスの命は無いも同然だ。
そしてそれを命じたことがバレてしまえばこの男すら天界での立場は危うくなるはず。
色々な意味の不安を織り交ぜての視線だ。
『大丈夫だよ。私が君を守ってあげるからね。君の纏う天界の気を魔界の気に変えてあげよう。そうすれば、万が一誰かに見られてしまっても・・・魔界のせいにできるだろう?』
『ですが・・・』
そんなにうまく行くものなのだろうかと。
不安の種は絶えることはない。
『案ずることはないよ、グレイス。イアンを君につけてあげよう』
『イアンでございますか?イアンはリリィ様に心酔しておられますわ・・。うまくいくとはとても・・』
『私がイアンの記憶を書き換えておいたよ。リリィの記憶を消した。イアンは空間を創造することが出来るから、きっと君の役に立つだろう』
確かに、天界も魔界も含め空間を創造する力を持つ者はそういない。
つまりかなりの戦力になるということだ。
『私はパワーズであるグレイスに頼みたいんだ・・・。もし成功すれば、これを君に贈りたいとも思っているよ』
男は自分の中指にはめられている銀色の指輪をちらつかせる。
その指輪を渡すべき相手は自分の伴侶にと思っている相手だ。
『本当でございますか!?とても・・嬉しいですわ!あたくしは貴方のために、きっと成功させてみせます』
嬉々とした表情で男の手を両手で握りしめ、男の前を去りゆくグレイス。
『お前のような下等生物を私の伴侶になどするわけがないがな・・・』
蔑むような男の声は、グレイスには聞こえていなかった。
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