狂愛~狂うほどに君を~




千はゆずの横へと腰をおろし、ゆずを自分の方へ引き寄せる。



『私、分からないんです』



話を始めたのはゆずだった。



『今まで、私はどうやって生きたのか・・。分からないんです』



ゆずは千に拾われてから、目の前のことに精いっぱいで過去を振り返ることはしなかった。


両親が死に、居場所などないから千と泉と共に過ごすことに違和感を持つことなく過ごしてきた。


千と出会い、千を愛し、愛してしまった千を失い、その間に考えることといえば千のことだけ。


千を失ってしまった悲しみに向き合い、傍にいてくれた泉に向き合い・・ただ目の前のことしかみていなかった。


その原因はディランとオリヴィアがゆずの記憶を書き換え、出来るだけ過去のことについて考えないようにさせたためである。


しかし、今は目の前に最愛の千がいて・・さらには信頼を寄せている泉も自分の元へと帰ってきてくれる。


その千と泉が、人間ではなく他のモノだということをたびたび意識させられて・・自分が人間だということに少しばかり違和感を感じ始めた。


そして目の前に現れたリアム。


明らかに人間の子供ではない、それなのに自分はリアムを知っている。


一体自分が何者なのか・・自分が何なのか分からない恐怖がゆずを襲っていた。



『ここにいるお前が、俺にとっては全てだ。そう不安にならなくていい・・たとえゆずが何もだったとしても俺がお前の居場所だ』



自分が悪魔だということを、話にきたはずだった。


しかし今伝えるべきなのかと千は躊躇いを感じる。


ゆずの両親であるディランとオリヴィアがゆずの記憶を書き換えたのであれば、それはゆずが自力で思い出さなければ意味がないのだ。


自分が天使だと、自分で思い出さなければ書き換えられてしまった人生を歩んでいくしかない。



『自分のことが・・・知りたいか?』



思い出さなければ、ゆずと一生一緒にいれる。


だがそれはゆずが一生自分自身に怯えなければいけない道。


そんなことをさせてまで、ゆずを縛っていていいはずがない。


悪魔である自分が善良な心をこうも持っているとは。


フッと心の中で自分を嘲笑う千。