『ゆず』
寝室のドアが開き、現れたのは千だった。
千はゆずに抱きついてるリアムへと視線をやり、口を開く。
『お前は、ゆずの守護霊だな?』
千はリアムの気をずっと感じとっていた。
だが、ゆずに悪さをするものではないと分かっていたので今までこちらへと姿を現さなかったようだ。
『そうだよっ!ゆずは僕のご主人様だよ!貴方は・・あ』
『少しこっちで話があるんだが、いいか?』
リアムの言葉にわざと被せ、顎でドアを指し示す。
リアムはなんとなくその意味を感じ取り応じた。
『もう少し休んでいろ。後で来るから』
『私は、聞いちゃいけないことなんですか?』
話はきっと自分のことだろうに、その自分を蚊帳の外にする千に少しムッするゆず。
自分のことなら、自分が一番知っているはずなのに。
自分のことが何も分からない。
それなのに、千とリアムは自分のいないところで自分の話をするのだと思うと面白くないし、不安だ。
『安心しろ、後に話す。今はまだ・・確証がないんだ。だから待っていてくれ』
千はゆずに歩み寄り額に口付けた。
ずるい、とゆずは思う。
この口付けで少し自分の機嫌が戻ってしまうのを感じたから。
千にいいように宥められてしまった。
『分かりました・・・』
そしてまんま、聞き分けがよくなってしまう自分もどうなのだと自問自答。
『ゆず!大丈夫っ!すぐ戻ってくるからね』
リアムはゆずの頬をぺろっと軽く舐めた。
『ひゃっ』
ゆずは驚き、
『貴様、これは俺のだ』
千は嫉妬。
『ええ、これはずっと癖みたいなものなのに!?』
リアムは千に引きずられて寝室を後にした。