グレイスを抱え、泉は屋敷へと戻った。
屋敷の一番南側の地下室。
『マクベス、いますか?』
真っ暗な地下室の中に足を踏み入れれば、湿った匂いが鼻をくすぐる。
『・・・・・俺様に何か用か』
闇の中光る、大きな目玉。
その目玉の中にゆうに泉が収まってしまうくらいの大きさだ。
細長く伸びる舌は二又に分かれていて
大きすぎるその四肢は地下室を通じ、外の地下一体を棲家としている。
その正体は、泉の使い魔である大蛇だ。
その姿を泉以外の前に現すことはほぼないが、使い魔の中で言えば頂点に君臨しているのは銀色の衣を纏う大蛇、マクベスであろう。
魔力を大量に蓄えているのも、このマクベスだ。
『この方を少し調べてほしいんです。僕はこれからこの屋敷に潜んでいる少年をとっつかまえてきますから』
マクベスには特殊能力があり、深層心理へと入り込むことができるのだ。
『この方とゆずちゃん、何か関係があるような気がしてましてね?』
『ふんっ随分あの小娘に入れ込んでいるようだな』
『僕も・・・千すらも魅了してしまいましたよ、ゆずちゃんは』
グレイスについて、どうしても引っかかることが泉にはあった。
深層心理に入るということは手っ取り早いが入られる側はとんでもな苦痛を味わう。
温厚な泉にとって急を要する場合の最終手段だ。

