『お前を、苦しませたくはない。傷つけたくもないんだ』
千が、何に対してそう言っているのかゆずにははっきりと分からない。
分からないけど、千が苦しそうなのは分かった。
ならば・・・
『私が苦しみを感じるのは、千さんがいないときです・・・。傷つくときだって、そうです。一緒にいれば、どんなに苦しいことだって乗り越えられます』
一緒に背負うことが、千を守ることになるなら、そうしたいと思う。
『お前が、愛しいんだ。狂おしいほど』
ゆずを抱きしめ返す千の力はどんどん強まって、少し苦しいくらい。
それなのに、その強さが心地良いとさえ思うゆず。
狂おしい愛をくれる千を、こんなにも愛しく思う。
それこそ狂っているのかも、とゆずは思う。
『今はまだ、何も言えないが泉が来るまでの間少しここを離れようと思う。ゆずにも来てほしい』
『千さんがいるならどこへでだって、私はいけます』
たとえそこが、地獄の底だとしても。

