狂愛~狂うほどに君を~




『ゆずには、治癒力がある』



開口一番、千が泉にそう告げる。



『つまり、そういうことですか?』



眉根を寄せ、千を見つめる泉。



『ああ、ゆずは天界の血を引いているだろうな』




人間が自分自身で致死量の毒を解毒することは不可能である。


しかし、ゆずはをそれを短時間でやってのけた。


人間では持ちえない、治癒力。


それほどの治癒力を持ち得るのは、天界の血を引くもの―。


天使や、妖精の類だ。


つまりゆずは天使の血を引いているということである。



『千・・・?大丈夫ですか?』


『俺はもう、ゆずを手放さないと決めている。が、ゆずはどう思うだろうな』



ゆずが天界の血を引いていることはさして問題ではないのだ。


ゆずが天界の血をひき、千が悪魔であることが問題なのである。


もともと交わることない二つの血筋。


悪魔と天使が愛し合うことなど、言語両断なのである。



『正直に話すべきだと僕は思いますよ。千とゆずちゃんが離れることは二人にとっても良くないはずです』



距離を置いてどうなったのか・・・。


思い出せない程、昔の話ではない。


もう二度と、お互いを傷つけあうことはしてほしくないと泉は切に思う。