狂愛~狂うほどに君を~




泉を残すのではなく、自分が残るべきだったと千は後悔する。


泉を残したのは、泉を信用しているからだ。


一人でも、大丈夫だと思ったから。


それは今でも覆ることはないが、自分がゆずから離れることが出来なかったからゆずは今こんなに苦しんでいる。


そう思わずにはいられない。


スピードで言っても、力で言っても、泉よりも千の方が勝っている。


ならば、自分が相手をしてすぐに追いつけばよかった。


それが一番のはずだった。


千のスピードが仇なしている。


今からゆずをつれて泉の元へ行くのは、さらに毒を体内に回してしまう可能性があるため出来ない。



『俺のせいだ・・』

『んっ・・千さん・・・』



ゆずが千へと手を伸ばす。


千はその手をとり、力強く握った。


一時的に痛みが引いたゆず。



『キス、してください・・・』

『こんなときに、何をッ』

『お願いします・・・このまま、死んじゃうなら・・千さんのそばで・・』



懇願するゆずに、千はキスを一つ落とす。



『お前は、死なせない』