狂愛~狂うほどに君を~




千の最高時速385㎞。


これは地球上の生物で最も速いとされる隼と同等のスピードである。


故に、魔界のモノは隼の千龍と呼称するのだ。



『うっ・・・・あぁっ!』



千の腕の中で、うめき声をあげるゆず。



『ゆず?おい、大丈夫か!』



千は室内へと急ぎ、ゆずをベッドへと降ろす。



『心臓がっ・・・あぁっ痛ッ!』



ビリビリッ


千がゆずの着ていたワンピースを引き裂く。



『チィッ。蜘蛛の毒にやられたか・・・』



ゆずの肩に蜘蛛の噛み痕が残っていた。


泉と引き離された意味を、一瞬で理解した。


解毒をする術を、千は持っていない。


何故ならば千の体は生まれつき、他の悪魔よりも強靭で千自身には猛毒ですら効くことはないからだ。


その為、解毒方法は必要がない。



『はあっはあっ・・はあっ』



目の前で悶えているゆずに、してやれることがない。


自分の無力さが腹立たしい。


イライラする。



『クソッ!!』