地球一つ滅ぼしてしまうような大きな力。


それがあれば魔界を制することが出来る。


魔界のものとしては喉から手が出るほど欲しい力だ。


しかし、千から直接力を奪おうと考えるような奴らはそうそういない。


つまり、千の魔力の元となってしまった人間であるゆずを糧にしようというのだ。


自分よりも脆い存在のゆずを狙う、それは当たり前のことだ。



『グレイス、君はさっき僕とやり合う気はないと言っていましたね?今回は引いてもらえるんですか?』

『ふふ、あたくしは泉様とはやりあうつもりはありませんわ。泉様、あなたとはね?』



不敵な笑みを浮かべるグレイス。


その笑みに、嫌な予感がした泉。



『まさかっ?!』

『お気づきになられました?ふふ、あたくしは蜘蛛を扱える、女郎蜘蛛ですわ。あたくしが得意とするのは蜘蛛の保有する毒の扱いですの。そして泉様、あなたは・・』

『僕は白蛇の泉ですからね。君と同じ毒特化です。やはり、ゆずちゃんに蜘蛛の毒を・・・』



やられた、泉は思った。

千とゆずをこの場から離すことが優先事項だと思っていたが、それこそ相手の思うつぼの展開だったのだ。



『正解ですわ。泉様とあの小娘を引き離す必要があったんですの。あの子に、毒が周りきる前に泉様が解毒してしまっては意味ないですもの。泉様クラスの毒特化になれば、解毒することなんて容易いですものね?』