「ふふ、さすが泉様ですわね?あたくしの存在に気づかれてましたか?」




一人残った泉の前に現れた妖艶な女性、グレイス。




「日本のこの地域にシドニージョウゴグモがいるなんてことは、あまりないですからねぇ。この蜘蛛はオーストラリアが主な生息地。それに加え不自然にゆずちゃんの肩についていましたし。僕たちが普通の人間だったなら、気にはしませんが。お生憎様、悪魔だなんて物騒な生き物に生まれてますからね、悪意には敏感なんですよ」



ニッコリとグレイスに向けて笑顔を向ける。



「僕は女性とやり合う趣味はありませんよ?」


「ふふ、グレイスとお呼びくださいませ、泉様。あたくしといたしましても白蛇の泉と名高い方とやり合おうだなんて思っておりませんわ。適うわけないですもの」


「聞いてもいいのかな?君たちは一体何をしに来たのですか?わざわざ、魔界から」


「しらばっくれるおつもりですの?泉様。千龍様の魔力の元・・・魔界に棲むものならば、欲して当然でございましょう?今の千龍様の魔力は、地球一つ滅ぼすことすら出来てしまいそうなほどの濃度ですもの」



やはり、こうなってしまいましたか。


グレイスと対峙しながらも思考を巡らす泉。


泉は千とゆずが一緒にいる道を選んだときからこうなることを覚悟していた。