「おや?ゆずちゃんの肩に蜘蛛がいますね」



ジェットコースターの順番待ち中。



「え?!蜘蛛・・?!」



蜘蛛と聞いた瞬間ゆずの体が一気に固まる。

女の子らしい反応だなぁと思いつつ、泉がゆずの肩の蜘蛛を払ってやろうと手を伸ばした。



「わ、私・・・蜘蛛だけはダメなんです・・。ごめんなさい!」

「泉」



ずっと黙っていた千が泉に目くばせをする。



「千はゆずちゃんを連れて屋敷まで戻った方がよさそうですね。ゆずちゃん、すいません。少しばかり緊急事態のようですので。また別の日にでも、仕切りなおしていいですか?」


「は、はい・・」



一体どうしたというのだろうか。


千と泉の様子がおかしい。


さっきまではほんわかムードだったのに、二人の目つきが一気に鋭くなってしまった。


不安に思うゆず。



「きゃっ?!」

「ゆず、首に手をまわせ」



千がゆずを抱き上げる。



「悪い、とばすぞ」



千が言うやいなや、ゆずの体は宙に浮いた。

な、何が起きてるの?!

わ、私・・・空を飛んじゃってる・・・。



「あ、あの泉さんは?いいんですか?」



ありえないことが起こっているのにも関わらず案外ゆずは冷静で。

地上に残された泉のことを気遣う余裕を見せた。



「あぁ、少し知り合いの相手をしている」



知り合いの相手?

緊急事態?

頭の中を整理しようにも出来ないゆずはとりあえず考えるのをやめ、振り落とされないように千に抱き着いた。