桜-cherry rain-雨



一方、リナと抱き合っていた男はと言うと、あたしの登場により逃げるようにそそくさと帰ってしまった。


「せっかくいい感じだったのになぁ、もう!」

なんて言いながら
肩下まである髪を揺らしてリナは口を尖らせる。



それを見てあたしは
怒られた事など気にせずにリナに尋ねた。


「…で?あの人新しい彼氏?」


その質問に
一瞬きょとん、としたリナは

「まさか!やめてよー!」

ケラケラと大口を開けて笑う。



…やっぱり。

呆れてそれ以上、何も聞く気になれなかった。



リナは
あたしの幼なじみ。


昔から可愛い顔をしていたリナは、気が付けば男の子に囲まれていた。

それをいい事に
男を手玉に取っては、こうやって付き合ってもない人と遊んだりしていて。



今のリナは
もはや“小悪魔”と言う名がピッタリ当てはまる子になってしまったのだ。


悪く言えば
“悪女”って言葉がよく似合う、そんな子。