あたしは
しばらく言葉を失った。
だって、二年の夏休みって…。
そんな前から
知ってたの――――?
呆然とするあたしに
泉はふっと鼻で笑って
「桜だって知ってるだろ?こう見えて俺、交友関係広いんだぜ?」
いつもの笑顔で
あたしに視線を向けた。
「……何で、」
やっと口をついて出たのは
たくさんの疑問。
涙はピタリと止まってしまった。
そんなあたしを見て
未だ蕾のままの桜を見上げた泉は
「…何でだろうなぁ。」
と口元に笑顔を浮かべて
小さく呟いた。
そして
束の間の沈黙の後
泉は照れ臭そうに頭を掻いて言ったんだ。
「桜には、かっこ悪い俺…見られたくなかったのかも。」
それは
あたしの耳に、甘く
切なく届いて。
「…本当は、リナにちゃんとフラれてスッキリしようと思ったんだ。」
でも、と言った泉に
止まったはずの涙が視界を滲まる。
「そんな必要、なかったんだよな。」
ポケットに手を入れ
泉はあたしの前に立った。
「…多分ずっと俺の中には、桜が居たんだから。」

