桜-cherry rain-雨



俯いたあたしに、泉は

「…あ~…。もしかして、リナから聞いた?」

と、どこか
間延びした声で笑った。



誰かの笑い声が
遠くで聞こえる。

それは、あたしの涙を後押しするように。



「…なーんで桜が泣くんだよ。」

「……………っ、」

「意味わかんねぇなぁ。」


はは、っと笑い
泉はあたしの頭を優しく撫でた。



そして
よっ、と桜の木に寄り掛かって空を仰いだ泉は

どこか吹っ切れた声で呟く。




「…俺、本当はずっと知ってたんだ。」

「……え…?」


ずずっと鼻を啜るあたしに、泉は丸筒を宙に投げながら続けた。

ポーン、と高く舞い上がる黒い証書筒が、真っ青な空に不釣り合いで。



「リナが、色んな男と遊んでるの。ずっと知ってた。」

それを手元にキャッチする泉を、あたしは涙で濡れた瞳で見つめる。




…嘘、じゃあ何で、



「…い、いつ…から?」

「ん?」

「いつから、リナの事…知ってたの?」



その問い掛けに
泉は「うーん、」と首を捻って

「…二年の夏休み、かな。」

と答えた。