――出会いと別れ。

そして、笑顔と涙が混じり合う春。



泉に出会ったのは
そんな春の入口だった。




「ひぃぃ~、遅刻するーっ!」

あたし
綾瀬 桜(アヤセ サクラ)は、この高校自慢の桜並木道を猛ダッシュしていた。


いくら最初が肝心!とはいえ、朝から身だしなみを気にして入学式に遅刻しました、だなんて

言い訳がましいにも程がある。


こんなんじゃ、入学早々
先生に目つけられるに違いない。


「もぉーっ!お母さんのバカー!!!」

今頃、家でせっせと身支度しているであろうお母さんに、やり場のない怒りを投げつけた。



…よーし。
こうなったら、元陸上部の意地ってやつを見せてやろうじゃないっ!


ふん、と鼻を鳴らし
カバンを背負ったあたしは、更に走るスピードを速めた。





…と、その時。




ボコ!っと鈍い音を立て
あたしの目の前に落ちてきたのは

ピカピカの大きなローファー。


…え!?な、何っ!?


あたしは足を止め
肩で息をしながら視線を上げた。




そう、ちょうど
桜を見上げるような、そんな感じで。