桜-cherry rain-雨



残されたあたしは、ポツンとその場に立ち尽くす。


さっきから
胸のざわつきが収まらない。



『俺、リナに告白しようかと思って。』

『でさ、俺映画に誘ったんだよ!』

『何と!いいよってさーっ!』



じゃあ、あれは嘘なの?

それとも
リナが嘘をついてるの?



でも、リナのあの様子だと
とても嘘をついてるようには見えない。



…じゃあ
泉は何であんな嘘を?


いくら考えても
答えらしい答えは出なかった。



それどころか
考えれば考える程

泉が嘘をつく理由が見当たらない。



…ねぇ、泉。

何で――――?





気が付けば
あたしは走り出していた。


もつれる足で
通い慣れた道を、通る度に思い出す桜並木を

あたしは、歯を食いしばりながらひたすら駆け抜けた。




だけど
学校に着いた時間は

遅刻寸前で。



「泉!」

「よぉ、桜。お前、卒業式にまで遅刻ギリギリかよー。」

「泉、ちょっと話が…、」

「ほら、ちゃんと並べ~!」


遮った先生の声に
結局まともに話す事すら出来ないまま

卒業式は始まってしまった。