桜-cherry rain-雨



「…だってリナ、泉に…告白されたんでしょ?」

「へ?」


行き交う人が、慌ただしくあたしたちを横切ってゆく。

朝の駅は
いつものようにみんなが急ぎ足で、まるで焦らされてる気分になる。




あたしの言葉に
リナは目を丸くして答えた。

「ちょっと話が読めないんだけど…。」

「え?」


今度はあたしが目を丸くする。


意味がわからない。


あたしは回転の鈍った頭を振り絞って質問を投げた。


「え、ちょっと待って。リナ、泉と映画行ったんじゃないの?」

「はぁ?あたしと泉くんが?」

「ち、違うの?」


ハテナマークが飛び交う中、リナは腕を組んで言う。



「違うも何も、前にも言ったでしょ。桜の友達とは遊ばないって。面倒な事になるのは嫌だし。」

「え、じゃあ、」

「映画にも言ってないし、まして告られてもないけど?」



…嘘、じゃあどうして―――。



唖然とするあたしに
リナは時計を見上げて

「桜!あたし遅刻しちゃうから、もう行くね!」

そう言ってそそくさとバスへと消えた。