桜-cherry rain-雨



卒業式の朝は、憎たらしい程の青空だった。



3年間着た制服は
この日の為だけに、クリーニングに出され

いつもより何だか着心地が悪い。


少しだけ擦り切れたローファーは、あたしが歩いて来た日々を刻んでいて。


よれたカバンを持ち上げて玄関を開け
一歩足を踏み出すと、何故か泣きそうになってしまった。




…今日で、全てが最後。


そう思うと、踏み出す足が重たい。


本当ならば、喜ぶべきはずの日なのに
心が痛むのは、この痛みの理由を理解しているから。


だけど、もう涙は
これでもかってくらい流したんだ。


泣く意味も、今日でなくなる。



泉への気持ちも

ときめきも、切なさも

全部、全部


今日でさようなら、だ。




目を閉じ、すぅっと息を吸い込むと
あたしは再び歩き出した。



…その時。



「桜!」