桜-cherry rain-雨



あたしは結局、泉に何も残せなかった。


移りゆく季節に薄れ
消えていく思い出にすら、きっと残らない。



伝えて
この恋に花を咲かせる事も

伝えて
この恋を散らせる事も出来なかった。





――伝える事に意味がある?





そんなの、綺麗事でしかないんだよ。


だって
ただ傷つくだけじゃない。



想ってた歳月が
たった一言で終わってしまうくらいなら

いっその事、枯れるまで想い続ければいい。



好きだって気持ちが消えるまで。



もしかしたら
一生消えないかもしれない。


そうしたら、その想いを抱えたままでもう、構わない。



そうする事でしか
あたしは自分を守れない。

強くなんかなれないし、なれなくたっていい。



だって好きなんだもん。


あたしは、それでも
泉が好きなんだよ。