桜-cherry rain-雨



それは、嘘じゃなく本当の事だった。


正確には、あたしはあの日からリナを避けていた。


わかってる。

リナが悪いんじゃない。


悪いのは、リナを恨めしく思うこのあたしだ。



だけどどうしても
リナと会う気にはなれなかった。

顔を合わせれば、あたしはリナを責めてしまうかもしれない。


言わなくていい事さえ、口にしてしまうかもしれない。




「そっか、」

「……うん。」


俯いたあたしに、泉はメロンソーダを一口飲むと

「まぁ、前よりは進歩したかな。」

と、いつもの笑顔で笑った。



「…よかったじゃん。」

「まーな。」


その時、「お待たせいたしましたー。」とトレーを持った店員に
一瞬途切れた会話。


それを見計らって、あたしは席を立つと

「ごめん、トイレ行ってくる。」

そう言って泉の返事を聞く前に、トイレへと歩き出す。



聞きたくなかった。

これ以上、何も。


もう、何も聞きたくない。





だから、あたしは逃げたんだ。