桜-cherry rain-雨



不安だったけど
あたしはちゃんと“桜”を演じれてる。

いつも通りに、笑えてる。


だから、大丈夫だよね?






「で?どうしたの?」

「…何が?」


ポカン、とする泉に
あたしはストローでオレンジジュースを混ぜながら続けた。



「何か話があったからあたしの事、呼んだんでしょ?」

冬休みのファミレス。


同年代の子たちで埋め尽くされたフロアは、笑顔で溢れている。



あたしはテーブルに置いた携帯のストラップをいじりながら、出来る限り平然を装って尋ねた。



「…リナと、上手くいった?」


振り絞るように出した声は、震えていなかっただろうか。


だけど大丈夫。
もう、傷ついたりなんてしないから。



カラン、と氷がオレンジに溶けてく。

泉の前に置いてあるメロンソーダとオレンジのコントラストが、やけに不釣り合いだった。




一瞬訪れた沈黙に
泉はさも当たり前かのように口を開く。


「リナから聞いてねーの?」

「……うん、最近会ってもないし、」