桜-cherry rain-雨



こんなに辛い夜は初めてだった。


泉を想って
眠れない夜を繰り返すのは

もう、慣れていたはずだったのに。


涙は、どんなに流したって止まる事はなくて。


塞ぎ込んだ世界で
何度も、何度も泉があたしを呼ぶ声だけが響いていた。



『桜、』




どうしたらいいか、とか

何で、とか


頭を駆け巡る疑問に、答えは出ない。



だって、この気持ちを伝える術などないのだから。



あたしがどんなに泉を想っても

泉が心を寄せてるのは、あたしの幼なじみ。


フラれるのをわかっていて
告白する程の強さなんて、あたしは持っていない。


だから、あたしはひたすら願った。



早く、春が来るように。



『桜、俺さ、』



一刻も早く
あの笑顔から離れたい、と。